農業のはじめ方図鑑 | farmer's 【ファーマーズ】

新規就農。新しい人たちの農業へのチャレンジ。

さいきん就農する人の話をよく耳にするけど実際のところどんな感じなんだろう…大変そうだけど…
ここでは最近就農した方、農業を仕事して始めた方たちに就農のキッカケや大変だった事、良かった事などをお話しをお聞きしました。

須藤章が農業をはじめるキッカケを書く前に
まず里山体験イベントのレポートを少しだけお伝えする。

須藤章は里山体験イベントを毎月行っている。その内容は多種多様だ。
今回は、「味噌づくり」と「石窯ピザ焼き」がメインだったので
そちらに参加させていただいた。

東京からだと電車とバスを乗りついで、2時間弱の相模湖畔。
今回の会場は、すどう農園からほど近くにある「しのばらの里」で行われた。
ここは昔の廃校を地域住民を中心に再活用するためにつくられた施設で子育て支援施設があったり、暖炉がある素敵な部屋がある、地域みんなのコミュニティスペースだ。

さっそく、須藤は集まったみなさんを前にこう語る。

食べるということは自分じゃないものを自分の一部にしてしまうこと。
だからこそ、ちゃんと考えてみて欲しい。
・・・と難しいことを言いましたが、おいしく楽しんでいってくださいと
人なつっこい笑顔で話しかける。

さあ、まずは味噌づくりから

今回つかう大豆は、この地の在来種である津久井種と茨城県の八郷種の2種類。
大豆はそれぞれの在来種が多くあり、各地で地元大豆自慢があるという。

前日から、よく洗って、多めの水につけおいた大豆を煮る。

今回は、臼と杵で大豆をつぶしていく。
2種類の大豆をみんなでつまみながら、参加者みんなで交代しながらしっかりとつぶしていく。

手作り味噌をつくりながらこう語る。

今回の手作り味噌は、大豆1kgに対して麹600gでつくります。
一般的には、大豆と麹の分量が同じと言われています。
普通は多分言われた通りの分量でつくると思うのですが、そこに「なんで同量なんだろう?」
大豆によっても、麹によっても、好みによってもいろいろあるだろうに、なんで判を押したように言われた通りにするんだろう。

たとえば、少し麹が多かったらどうなるんだろうか、1.1kgだったらどうだろう?
900gだったらどうだろう?800gだったらどうだろう?
・・・そういうことをしてみて欲しいんです。それが「対話」であり、「自分のもの」へとなることなんです。

なんだかよくわからないけど、言われたから・・・そんなこと多すぎませんか?

そう人なつっこい顔で
須藤は参加者に問いかける。

安全・安心と安易に言わない。

すどう農園は有機農業を行っている。
「粗食・少食でバランスをとる」これがすどう農園の土づくりの基本だという。

須藤は真剣な顔でこう語る。

人間も植物もまるで一緒なのです。有機栽培であれなんであれ、やりすぎはいけません。栄養が過剰になれば、虫もきます。病気も起こします。栄養過剰な野菜は、たとえ有機栽培でも有害です。
例えばホウレンソウ。堆肥のやりすぎで育ったホウレンソウは、見た目こそ大きくて立派です。
しかし、そのエグイこと。

硝酸態窒素は、過剰になると悪性貧血を起こすと言われています。
「有機栽培」だから良い、という考えはとりません。適切な施肥をしているのであれば、化学肥料も有効です。 逆に「有機JAS」の規定では、事実上は化学肥料と同じなのに、製造過程によっては「有機JASに使ってよい」とされているもものもあります。

だからこそ、言葉を鵜呑みにせず、自分で考え、試し、そして判断していくことが必要だという。

自慢の石窯ピザをつくる。うまい。

続いて、しのばらの里にある石窯でピザ焼き体験。
この石窯は、須藤が地域のみんなとつくったものだ。
地元の薪をくべて、しっかりと石窯を熱していく。

しっかりと石窯を熱している間に、ピザ生地をこねていく。
ピザ生地につかう小麦粉も、すどう農園でつくっている。

夫婦揃ってパン作りの達人であり、小麦粉の扱いは慣れたもの。
今回利用するのは「ニシノカオリ」と「ユメシホウ」2種類を混ぜ合わせることで、よりおいしくなるという。

この小麦、獲れたてではない。知っている人にとっては当たり前だが
小麦はしっかり寝かした方がおいしくなる。ひと夏おくぐらいがベストとのこと。
なんでも獲れたてがいいと勘違いしがちな私たちにとっては意外な発見だった。

トッピングも地産。
ソーセージに見えるのはヒエやアワなどからつくったもの。
トマトソースや、アンチョビソースもすどう農園でつくったもの。
まさにこの地でつくられたピザ。
その上に、獲れたての野菜をトッピングしていただく。当然うまい。

コミュニティの中心にある石窯

石窯が地域のひとびとがつながる1つの「ボタン」になればいいと言う。

燃やす薪はもちろん、そこで焼く材料も地元のもの。
そしてそこに地元の人も地元じゃない人も集まり、そこから交流がはじまる・・・
そのためのひとつのボタンだと。
たしかに石窯にまわりにいる
みんなの顔は、真剣かつ笑顔だ。

つかった事がない人からすれば石窯は単なる「調理器具」あるいは「過去の遺物」と見えてしまうのかもしれない。
しかし、須藤がつくった石窯は、火がくべられると自然と人が集まり、おいしいものを各々が持ち寄り時には真剣に語り合ったり、笑い声が響いたり・・・。

そんな風景をたくさんつくり、見てきたからこそ須藤は石窯に対して、様々な想いを託す。

サラリーマン、パン屋、沖縄で介護・・・そして

そんな須藤もいきなり農家ではなかった。

若い頃国立大学の園芸学部で学んだ。実家は石屋。
しかし石屋を継がずにサラリーマンとして会社勤めもした。
そして、パンづくりに興味を持ち、天然酵母パンで有名な「ルヴァン」で修行。
その後、石窯と国産小麦でつくる「草の実酵房」を開いた。
石窯づくりはまさに達人。いろんな場所に石窯をつくり、本まで出しているほど。

そのあと沖縄の宮古島に移住し、介護関連のNPOを立ち上げるものの
家族の事情もあり、実家である相模湖に戻ることを決意。
そこから、新しい農業をはじめだした。

大学時代の経験もあったが、実際に農家となるのははじめてだった。
ひとつずつ確かめて、試して、すすんでいった。

つながる農業を目指して。

そんな須藤は、いまだにいろんな事に挑戦し続ける。
里山体験イベントもそうだし、今度新たにはじめるマドベジもそうだ。
また、ピザでもつかったソースなどもつくっている。

もちろん収益面も大事だが、須藤はそれよりも「つながり」を重要と考えている。
つながり続けることでいろんな事が可能になる。
「つくる人」と「食べる人」が断絶した関係でなく、つくるところを興味を持ち、しっかりと見てもらう。逆に農家は食べる人の立場で欲しいものをつくるべきだと。

農家になるまでにいろんな経験を積み、いろんな人とつながってきた
須藤だからこそつくれる「つながる農業」のこれからが楽しみだ。

<取材後記>

里山体験イベントに妻と3歳の娘と参加させていただきました。
取材を忘れてしまうほど、本当に楽しいイベントでした。

誤解されるかもしれませんが、特別なアトラクションがある訳でもなく
ゲームなどをする訳でもない。

話を聞く。味噌づくりをする。ピザづくりをする。それをみんなで一緒にやる・・・
それだけのシンプルな事にも関わらず、心に染みいる楽しさがありました。
参加されたみなさんの笑顔が、素敵に輝いていました。

この里山体験イベントも、様々な手作りのソースや漬け物、そして今度はじめる
マドベジ」も、須藤さん自身がおいしいと感じ、楽しんでいるからこそ、ひとが集まってくるのでしょう。

農家になることは決してかんたんではないですが、須藤さんを見ていると「なりたい職業」だなと思いました。
また家族ともども第二のふるさと的にお 邪魔させていただきます♪

須藤さんありがとうございました。

(取材:farmer's編集部 菅 佑介)

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