農業のはじめ方図鑑 | farmer's 【ファーマーズ】

新規就農。新しい人たちの農業へのチャレンジ。

さいきん就農する人の話をよく耳にするけど実際のところどんな感じなんだろう…大変そうだけど…
ここでは最近就農した方、農業を仕事して始めた方たちに就農のキッカケや大変だった事、良かった事などをお話しをお聞きしました。

東京都では5人目、八王子市では初の新規就農者。
25歳の舩木翔平さんが「農家」になったのは2012年。非農家からの就農、しかも都市部での新規就農は大変珍しく、「手続きや農地の関係が大変で、就農まで2年程かかりました」という言葉から、その苦労がうかがい知れる。

舩木さんが就農を決めたのは大学4年生の10月頃。
中学生の頃から植物に興味を持ち、高校では造園を、大学では森林を学んでいた。
農業を本格的に学んだのは、卒業後に地元・八王子で農業研修を始めてからだ。
その経験もあり、東京都農業会議(新規就農相談窓口)では「八王子が就農しやすいかもしれない」と言われたが、

市では「初めての新規就農者」という事もあり手続きに手間取り、農地を所有している地主さんからは「知らない人に渡したくない」と言われ、結局2年ほどかかった。「現在借りている農地もすぐには貸してもらえませんでしたが、直接会って自身の経歴や考えを話すことでお借りすることができました」。

地主さんが了承した一番のポイントは、舩木さんが「農業だけをしようと思っていなかった」点にあるという。実は舩木さんは“町づくりをしたい”という想いから就農を決めた。「もともと町づくりに興味があり、『農業が関わる町づくりがしたい』と思っていました。しかし、農業をやっていない人間が第一次産業に対してものを言うのは良くないと思い、就農を決めました」。農業だけでなく里山保全や社会福祉に力を入れてきた地主さんにとって、舩木さんの想いは共感できたのだろう。

話は少しそれるが、地主さんはかつてこの地で酪農をしていた。あだ名が“おっさん”なので、「おっさん牧場」とも呼ばれているが、その名残から、入口にはサイロがあり、事務所は牛舎の2階にある。牛舎には3頭の雄牛(人懐っこい性格のジャージー種とブラウンスイス種)と2頭のヤギが飼育されている。後述するが、イベントをメイン事業にしている事もあり、動物と触れ合える機会は子供から大人まで喜ばれている。

さて、農地を借りることができ、本格的に農業を始めた舩木さん。コンセプトは「MURAづくり」。農場の通称である「YUGI MURA Farm」も、その実現に向けて名づけた。「通称は、昔ここが『由木村』という小さな村だったことに由来します。『MURA』という、日々を過ごす範囲の中で、コミュニティが形成され、経済が回る。その仕組みを作りたいと思っています」。

そのため、農業生産での収入に重きを置くのではなく、農業体験等ができるイベントや、「シェア農園」の運営をメイン事業にしている。農業イベントでは季節の野菜の種蒔きや収穫を、「シェア農園」では「みんなで野菜を作って、みんなで野菜をシェアしよう!」をコンセプトに、参加費をいただきながら野菜づくりをしている。

「様々な人に農園に来てもらいたいですね。収穫など楽しい作業だけでなく、少し大変な農作業を体験してもらったり、専門的な話を聞いてもらったりして、『そうなんだ!』という気付きを得てほしいと思います。イメージとしてはCSA(地域で支える農業)の仕組みです」。

生産部門では、畑作と養蜂の複合経営をしている。
「『畑に人を呼ぶにはどうしたらいいだろう?』と考えていたときに、『ミツバチは集客力がありそうだ』と思い取組み始めました。ハチミツの採れる時期と採れない時期があるので、イベントができる時期も限られてしまいますが、集客力はとてもありますよ」。

ミツバチの生育管理も技術がいるそうだ。「ミツバチの数によって巣枠の枚数を調整したり、分峰して個体数が減らないように郡を調整したり。4月~5月はミツがたくさん溜まる時期なので忙しいですが、他の時期はペットのように飼ってますね。あと、ミツバチは温度差や天候に敏感なので、音で『今日、怒ってるなぁ』とかわかりますよ」。

ハチミツは、そのままでも販売しているが、加工品としての利用も考え、試作品に取組んでいる。最初はクッキーなど日持ちのするものから取組み、売れるようになってきたらケーキ類などに取り組む予定だ。「加工は近くの福祉施設にお願いしています。八王子にはこれといったお土産がないので、その一つになればとも思っていますし、地域の中で色々な連携を取りながら、『MURAづくり』を実現していきたいと思っています」。

畑作に関しては、農業体験以外の生産では、契約栽培をしている。
「今年は某プロジェクトの関係で、サツマイモの契約栽培をしています。野菜に関しては、イベント用か、契約栽培か、出荷しやすいもの以外は、基本的に生産していません。というのも、畑は少しずつ増えてきていますが、場所が点々としているので作業効率が悪く、近くに野菜を洗う場所もないので、色々と効率が悪いんですよね。飲食店からの引き合いもあるのですが、現状では難しいところです」。自分の目標や取組みたいことがあるからこそ、経営判断にもブレがない。

ちなみに借りている農地は、休耕地や荒れ地、道が整備されていない場所など、不便な場所が多いそうだ。この点については、他の新規就農者からも聞く事がある。開墾し、土作りをし、農地として復活させることも、新規就農者に求められる技術なのかもしれない。

<取材後記>

様々な壁を乗り越え、前へ前へと進む舩木さん。一番やりがいを感じる瞬間は「お客さんの笑顔が出たとき」だそうだ。「お客さんが笑ったかどうかが自分の中の評価基準。僕の作った野菜を食べて『美味しい!』という表情が出たら成功。人の感情を見るのが好きですし、数値では表せないものですね」。お客様の笑顔を原動力に、“地域を担う農家”として活動を続ける舩木さん。これからの益々の活躍が楽しみだ。

(取材:NOPPO編集部 福本由紀子)

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